『非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望』 雨宮処凛 著(光文社新書)

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「このまま、どうなってしまうんだろう」——そんな漠然とした不安を、あなたは心のどこかに抱えていないだろうか。

あらすじ

過酷な受験競争を強いられながら社会に出た途端にバブル崩壊と就職氷河期が直撃し、フリーターや派遣という非正規の道を歩むことになった世代がいる。ロスジェネ、あるいは「失われた世代」と呼ばれる人たちだ。この本は、その当事者である著者・雨宮処凛が、自分と同じ立場の女性たちに丹念にインタビューを重ねた、痛烈でリアルなルポルタージュだ。 Kobunsha

30代の読者にとって、この本はひとごとではない。アラフォーの今は、30代の明日でもある。独身女性非正規の7割が年収250万円以下。女性非正規の平均年収は172万円——そんな数字が淡々と並ぶとき、背筋がざわりとする感覚を覚えるかもしれない。 Kinokuniya

本書は「非正規という働き方」「アラフォー女性と婚活」「生きづらさを抱えながら」「親の介護、その時どうする?」という4部構成で展開される。仕事だけではなく、結婚・出産・病気・老後・孤独・介護と、女性の人生に降りかかるあらゆる問題が、インタビューに答えた女性たちの肉声を通じて浮かび上がってくる。 Kobunsha

特別に怠けていたわけでも、特別に間が悪かったわけでもない。真面目に、誠実に生きてきた。それでも、気づけばセーフティネットの外側に立たされていた——そういう女性たちの言葉が、ページをめくるたびに積み重なっていく。怒りよりも、静かな諦めのほうが重い。そのトーンこそが、この本の最大の誠実さかもしれない。

著者・雨宮処凛が他のジャーナリストと異なるのは、「取材する側」と「される側」の境界線が限りなく薄いことだ。自らも非正規・単身・アラフォーという立場から、数字の向こうにある一人ひとりの「普通に生きたかった」という声を掬い取る。その視点は、社会告発の鋭さと、当事者としての哀しみの両方を帯びている。

30代は、まだ「先のこと」として逃げられる年齢だ。でもこの本を読むと、その「先」がどんな地形になっているのかが、急にリアルに見えてくる。ワーキングプア、リーマンショック、派遣切りといった言葉が象徴する茨の道を歩んできた世代の証言は、「なぜ社会はこうなったのか」を問い直す力を持っている。 Kobunsha

巻末には「一人暮らしが孤独を意味しない社会へ」をテーマにしたライター・栗田隆子氏との対談が収録されており、絶望を語るだけで終わらない視座も示されている。 Kobunsha

不安を「自己責任」で処理することにうんざりしているすべての人に、静かに手渡したい一冊だ。

『非正規・単身・アラフォー女性』を読んで

この本を手に取ったのは、タイトルに射抜かれたからだ。「非正規・単身・アラフォー」——どれかひとつでも自分に当てはまる人なら、書店でこの背表紙を見た瞬間、目が止まってしまうのではないだろうか。わたしもそのひとりだった。

読み始めてすぐに気づいたのは、これが「かわいそうな人たちの話」ではないということだ。ページに登場する女性たちは、特別に不運だったわけでも、特別に怠けていたわけでもない。真面目に、誠実に、自分なりに精一杯やってきた人たちだ。それでも、気づいたときには非正規という働き方から抜け出せなくなっていた。その過程があまりにも自然で、静かで、だからこそ恐ろしかった。

正直に言うと、読んでいる途中で何度か本を閉じたくなった。他人事として読めなかったからだ。「将来どうなるんだろう」という漠然とした不安は、わたしも日常のなかにずっと持ち続けている。老後のこと、病気になったときのこと、親の介護が始まったときのこと。考えても答えが出ないから、なるべく考えないようにしている。でもこの本は、そうやって見ないふりをしていたものを、静かにひとつひとつ目の前に置いていく。

著者・雨宮処凛が書くインタビューの言葉の中で、いちばん胸に残ったのは「普通に働いて、普通に暮らしたかっただけなのに」という趣旨の声だった。贅沢を望んでいたわけではない。派手な生活がしたかったわけでもない。ただ、真面目に働いた分だけ、きちんと報われたかった。それがこんなにも難しいことだったのかと、改めて突きつけられる気がした。

この本が怖いのは、絶望を声高に叫ばないところだ。怒りよりも、静かな諦めのほうが多い。そのトーンが、読んでいるうちにじわじわと胸に染みてくる。社会の構造的な問題として冷静に語られれば語られるほど、「これは自分の責任ではなかったのかもしれない」という感覚と、「でもこれから自分はどうすればいいんだろう」という不安が同時に押し寄せてくる。

30代というのは、まだ「先のこと」として先送りができる年齢だと思っていた。でもこの本を読んで、その「先」はもうすぐそこまで来ているのだと感じた。アラフォーの今は、30代の明日だ。

救いだったのは、巻末の対談が「それでも、どう生きるか」という問いに向き合っていたことだ。一人暮らしが孤独を意味しない社会を、どうやって作るか。個人の問題として片付けるのではなく、つながりのなかで考えていこうとする視点に、少しだけ息ができた気がした。

読み終えて、わたしは不安が増えたのか、それとも少し楽になったのか、正直よくわからない。ただ、「わたしだけじゃないんだ」という感覚だけは、確かに残っている。

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