嫌われる勇気

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『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健 著

タイトルだけ見ると、少し尖った印象を受けるかもしれない。「嫌われる」なんて、できれば避けて通りたい。そう思いながらページを開いた人も、きっと多いのではないだろうか。

この本は、哲学者・岸見一郎がアルフレッド・アドラーの思想をわかりやすく伝えるために、古賀史健との対話形式でまとめた一冊だ。登場するのは、人生に不満を抱える「青年」と、アドラー心理学を信奉する「哲人」。ふたりのやりとりを読み進めるうちに、気づけば自分も対話に引き込まれていく。

なかでも印象的だったのが、「課題の分離」という考え方だ。自分の課題と、他者の課題をきちんと分ける——言葉にすれば単純だけれど、実践はなかなか難しい。誰かに嫌われたくないと気を遣いすぎて、自分の気持ちを後回しにしてしまう。そんな経験に、思い当たる節がある人は少なくないはずだ。

「他者からの承認を求めなくていい」というアドラーのメッセージは、最初は突き放されたように感じるかもしれない。でも読み続けるうちに、それが冷たさではなく、むしろやさしさから来ているのだとわかってくる。あなたはあなたのままでいい、ということ。他人の目を気にして縮こまっている自分に、そっと手を差し伸べてくれるような言葉だ。

もちろん、すべてに納得できるかといえば、そうでもない。青年が哲人に食ってかかる場面では、「私もそう思う」と思わず共感してしまう箇所もある。でも、それでいいのだと思う。この本は答えを押しつけるのではなく、読む人それぞれに問いを持ち帰らせてくれる。

読み終えたあと、なんとなく背筋が伸びる気がした。嫌われることを恐れるより、自分らしく生きることを選ぶ——その勇気が、すこしだけ手の届くところにある気がした。

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